能 熊野 (ゆや)



あらすじ

 右大将・平宗盛の寵姫、熊野は遠江の池田の宿にいる母の病を案じている。朝顔のもたらした文に矢もたてもたまらず宗盛に暇を乞うが、宗盛は許さずかえって強いて花見に誘う。熊野は道中の景色も目に入らず、ひたすら母の命長かれと仏に祈る。
 清水寺に着いて宗盛は熊野に舞を所望、涙を押さえて舞ううち、急雨は満開の桜をむざんに散らす。熊野の即吟の和歌にさしもの宗盛も心打たれ帰国を許す。
 「熊野に松風米の飯」とうたわれる、名曲中の名曲です。

演者から一言

 江戸時代の川柳に「熊野に松風米の飯…」(米の飯のように毎日食べても<謡っても>飽きないの意味)と詠まれ、謡いも多く 型も多い上に 文や短冊の扱い・囃子との合い方などがややこしい、シテとしてやりがいたっぷりの人気曲。
 母親からの手紙を途中までワキの宗盛が読み途中からシテが読む「読継之伝」。満開の桜の下で歌を短冊に書くときに、常は一度墨を付け上の句だけを書く型を、二度墨を付けて下の句まで書いてワキが全部謡う「墨継之伝」 など。
 いずれもワキの協力によって行う小書があります。


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