白河院に菊守をしている山科荘司(前シテ)という老人がいた。ある時女御(ツレ)を垣間見た荘司は恋をし、仕事をおこたるようになる。院の家臣(ワキ)は恋を諦めさせる為に荘司を呼び出し、錦で美しく包んだ重荷を見せ、これを持って百度も千度も御庭を廻るならば、女御の御姿を拝ませようと言い聞かせる。荘司は喜び、軽く見える重荷を持とうとするが、老人の力では叶わず、失望落胆のあまりに憤死してしまう。(中入)不憫に思った家臣は事の次第を女御に申し上げた。女御が家臣の勧めに従い、荘司の亡骸に情けの言葉をかけた後、立とうとしても立つ事ができない。その時荘司の亡霊(後シテ)が現れ、誠なき言葉を責め立てる。しかしやがて亡霊は怨みの心を捨て、亡き跡を弔うならば、千代の御守となろうと誓うのであった。
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